久世高裕の新書レビュー

現在26歳。犬山市議会議員の久世高裕が、2008年に出版されるすべての新書を読破し、レビューしていきます。

佐藤尚之 『明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法』

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) (アスキー新書 45)明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) (アスキー新書 45)
(2008/01/10)
佐藤 尚之

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「広告」が根本的に変わる。

インターネットの普及+情報の洪水+モノの充足によって、消費者を取り巻く環境は大きく変わり、それにつれて広告の手法も今、変化を求められています。

2ちゃんねる、youtube、ニコニコ動画、価格.comなどの登場がその最たる例で、今や広告の世界も完全に消費者主権となりました。

しかし、その基本である「コミュニケーション」の本質は、いつの時代も変わることはありません。

本書には、新しい消費者とコミュニケーションする方法が、現役クリエイティブ・ディレクターである著者によってふんだんに紹介されています。

広告業界の関係者だけでなく、たとえば「偶然出会うから記憶に残る」など、僕のような政治関係者にとっても示唆の得られるような内容が多く盛り込まれており、人とのコミュニケーションを考察するにあたって非常に有益であるといえます。

インターネット関係の専門用語が多いのがタマにキズですが、語調も軽く、万人にオススメしたい一冊です。

竹内実 『コオロギと革命の中国』

コオロギと革命の中国 (PHP新書 502)コオロギと革命の中国 (PHP新書 502)
(2008/01/16)
竹内 実

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ちょっとこれは…。

コオロギの相撲と中国の革命(というよりは、思想そのもの)に似ている点があるというだけで、掘り下げた分析があるわけでもないし、ただそれを紹介しているに過ぎません。

中国の思想に関心がある人にはいいかもしれませんが、一般向けにはちょっとオススメしかねます。

着想としてはおもしろいんですけど…。

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北康利 『匠の国 日本 職人は国の宝、国の礎』

匠の国 日本 職人は国の宝、国の礎 (PHP新書 501) (PHP新書 501)匠の国 日本 職人は国の宝、国の礎 (PHP新書 501) (PHP新書 501)
(2008/01/16)
北 康利

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雑学としてはおもしろいと思います。

日本酒、漆器、和紙、茅葺など、日本古来より受け継がれた数々の伝統技術と、それを担う職人たちの姿が生き生きと描写されています。

それだけでなく、「新米」「やくざ」「ゲテモノ」といった一見ものづくりに関係のなさそうな言葉が、実は職人たちの世界から誕生したものであるという意外な発見もあり、非常に好奇心をそそる内容となっています。

しかし、こういった本によくありがちなのですが、もういい加減「『楽して儲けたい』というのは誤りだ」と言って、金融業や情報産業のような新しい産業を卑下するのは止めたらどうでしょうか。

これらの産業においても長い期間の地道な努力が必要なのは言うまでもないことであり、それを「もの」をつくっているか否かで判断するのは、荒唐無稽としか言いようがありません。

大事なのは、「ものづくり」一点に固執することなく、金融技術や情報技術も含めて、あらゆる「技術」をしっかりと評価し尊重することではないでしょうか。

…といってマジメに反論すること自体がナンセンスなのかもしれませんね(^^;

この本の趣旨は、「職人は国家の礎であることを忘れず、この伝統を大切に守っていこうとする気持ちを読者の皆さんにも共有してもらいたい」(まえがき)ということなのですから。

日本の伝統技術を簡単に紹介したガイドブックとしては良い本であると思います。


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原田武夫 『北朝鮮vsアメリカ 「偽米ドル」事件と大国のパワーゲーム』

北朝鮮vs.アメリカ―「偽米ドル」事件と大国のパワー・ゲーム (ちくま新書 699)北朝鮮vs.アメリカ―「偽米ドル」事件と大国のパワー・ゲーム (ちくま新書 699)
(2008/01)
原田 武夫

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日本はこの現実にどう立ち向かえばいいのか。

2005年3月まで外交官を務めていた著者による啓蒙の書。

現在の北朝鮮を巡る大国間のパワーゲームの深層が経済的な利権獲得競争にあることを明らかにし、「偽米ドル問題」を巡る各国の対応からその様を解き明かしていきます。

2005年9月15日、アメリカ政府はマカオにある「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」をマネーロンダリングの懸念がある金融機関として認定し、マカオを舞台とした北朝鮮によるヤミ金融取引とその背後にある「偽米ドル問題」を盛んに攻撃し始めました。

しかし、ドイツやスイスなどから北朝鮮が偽米ドル問題の真犯人であるという説に批判が加えられ、冷え切っていた米朝間の関係は2007年1月にドイツ・ベルリンで行われた米朝協議を契機に一転し、その後両国は急速に接近していくことになります。

この背景にはいったい何があったのか。

著者は、そこに各国の通貨を巡る覇権争いがあったと言います。

アメリカにとって、恒常的な経常赤字を抱える中、ドル安へと実質的に誘導するのはやぶさかではないにしても、過度にドルの信用が失われ、国際通貨としての地位を追いやられるような事態は絶対に避けなければならないところ。

それとは逆に、「ユーロ」を擁する欧州勢からすれば、 ドルが後退し、ユーロがそれに代わるものとして世界中の人々に認知されるようになれば、経済の「ネットワーク外部性」(利用者が増えれば増えるほど収穫逓増となる)が働き、ユーロの国際的地位がますます高まることになるため、むしろ望ましい状況が生まれることになる。

実は現在、ドイツと北朝鮮は非常に密接な関係にあり、このままでいけば、欧州勢と北朝鮮が手を結んでアメリカを攻撃しかねない。

それに対してアメリカは、逆に北朝鮮に歩み寄ることによってその事態を防ぎ、自国の権益を守ろうとしているのだと― 著者はこのように解説しています。

このような指摘は従来の外交論にはなかなか見られなかったものであり、そうした点では一読する価値は十分にあると言えます。

ただし、経済に関する記述については疑問に思わざるを得ない部分もあり(「アメリカが中国の隠された不良債権問題をダシに中国を脅す」というようなところ等々)、少々陰謀論的な記述にも気をつけて読み進めていかなければなりません。

こうした点に注意して読んでいけば、従来とは違った海外ニュースの見方ができるようにもなりますので、国際政治に関心のある方にはぜひオススメしたいと思います。


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大山典宏 『生活保護 vs ワーキングプア 若者に広がる貧困』

生活保護VSワーキングプア (PHP新書 504)生活保護VSワーキングプア (PHP新書 504)
(2008/01/16)
大山 典宏

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思っていたよりはるかに深刻。

ケースワーカーとして生活保護の最前線にいた著者が、自らの経験と詳細なデータをもとに、若者や高齢者、そして子どもに広がる「現代の貧困」の実態に迫ります。

2007年7月、福岡県北九州市で一人の男性が「おにぎりが食べたい」と書き残して孤独死した事件をきっかけに、生活保護に対する議論が白熱しました。

マスコミは行政の「水際作戦」とも呼ばれる受給申請者への厳格な対応を激しく非難しましたが、この問題はそのような単純な構図では推し測ることのできない問題であることが、本書によって明らかにされています。

こうした「生活保護=悪」という単純化された図式がさらにそのイメージを増幅させ、社会をよりいっそう貧困の連鎖に追いやっていくということを、私たちも理解しておかなければなりません。

この問題の解決方法として、著者は必ずしも具体的な回答を用意しているわけではありませんが、「生活保護を『入りやすく、出やすい制度へ』と改革していくことが必要だ」という主張には大いに説得力があります。

つまり、生活保護制度を「より多くの利用者に、より高い質の自立を提供する」ものに変えていくことが必要だということであり、そうすることによって事態が好転するということも確かにあるでしょう。

ただ、「そのために何をどう進めていけばいいか」ということについては、それほど多くのページが割かれておらず、やや抽象的な感は否めません。

問題提起としては非常に良い書であると思います。


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